ご挨拶

日本フィル創立60周年にあたって

 

 日本フィルハーモニー交響楽団は2016年6月、創立60年を迎えます。これもひとえに皆さまからの多大なるご支援のお陰であり、心から感謝申し上げます。

 

 1956年に創立指揮者・渡邉曉雄が「日本に新しいスタイルのオーケストラを」と、夢と希望をもって創設した日本フィル。その後の社会変化の中で数々の困難に遭いながらも、今日では文字通り日本を代表するオーケストラへと成長し、音楽芸術文化の発展に寄与するための活発な活動を繰り広げています。今日までの日本フィルの歩みは、常に多くの方々に支えられてきた歴史そのものでもあります。

 

 60周年を迎えた今、オーケストラがこれからの社会で果たすべき役割を見つめ、この活動をあらゆる人々へ、世代へ、地域へ、そして世界へと広げて行くことが楽団の使命だと考えております。これまでの伝統を礎に、日本フィルは新しいステージに進んでまいります。

 

 楽団の中核であるオーケストラ活動については、アレクサンドル・ラザレフ、ピエタリ・インキネン、小林研一郎、山田和樹、西本智実らを核とした個性溢れる充実した指揮者体制のもとで、芸術性の更なる追求とオーケストラの個性の確立につとめるとともに、クラシック音楽の持つ奥の深い面白さを存分に味わっていただき、知れば知るほどわくわくする知的探究心で音楽を楽しんでいただけるよう工夫を凝らしてまいります。そしてクラシックに親しんだ聴き手だけでなく、これから音楽を楽しもうとしている人々をも巻き込んだ大きなうねりにしていきたいと思っています。

 

 また、「こどもから高齢者まで幅広く音楽の楽しさを共有してもらう」「音楽で豊かな地域社会を育んでもらう」「被災地と更に寄り添う」を目標に一層活発にエデュケーション・プログラム、リージョナル・アクティビティを展開し、この分野での第一人者として新しい道を拓いていきたいと思っています。日本フィルの幅広い活動のベースには、過去の経験から「常に人に寄り添い、心の交流を重視し、人の心の温もりや心の襞までわかる楽団」として成長し、事業を発展させてきた日本フィルの遺伝子があります。「日本フィルに行くと温かさを感じて家路に着ける」、こうした音楽の場を広げていくために、これからも楽団一同全力を上げてまいります。

 

 これからも皆さまとともに歩んでいく日本フィルを、どうぞよろしくお願いいたします。

公益財団法人日本フィルハーモニー交響楽団
理事長 平井俊邦